いよいよATAC2019まであと1週間ですね。
そこに合わせ出てかもしれませんが、中邑賢龍さんの新着動画が公開されました。
重度重複障害の人とのコミュニケーション
マジカルトイボックスとしてはまさにど真ん中のテーマですね。
私たちのかかげてきたのは「障がいが重い人でもコミュニケーションをしているはず。なんとかそれを豊かにできないだろうか?」ですから。
最近は賢龍さんに来てもらうことも少なくなってきましたが、初期の頃はいろいろと講演をしてもらって頻繁にお話を伺いました。
私にとっては学び直しの内容ばかりです。
今回のお話の中でのポイントはこちらの書籍のことが触れられていますので、動画を見た後はぜひこちらの本も手に取って読むことをお勧めします。
黙って観るコミュニケーション
かいつまんで賢龍さんがお話しされていることの概要。
●ここで想定する人たち
重度肢体不自由と重度知的障害を合併している
声を発するが何を要求しているか分かりにくい
体の動きもあるが、その意図が分かりにくい
語りかけに反応はあるが、意味をどこまで理解しているか不明
●ポイント
・関わる人によって行動の解釈が違ってませんか?
・能力を正しく把握しなければコミュニケーションは難しい
・Yes/Noコミュニケーションが使えるのでしょうか?
・言語理解の難しい人の意思を汲みとるには?
・支援者主導のコミュニケーションになってませんか?
●まとめ
・コミュニケーションの条件を変え、比較することで認知能力や運動能力を評価できる
・Yes/Noのコミュニケーションは簡便でよく使われるが、認知や運動能力を把握して正しく使うべき
・支援者主導のコミュニケーションの創作が起きないように注意
ぜひ、動画を見てもらいたいところです。
さて、この動画を見ながら思いだしたのですが、賢龍さんの香川大学時代の教え子である佐野さんと、「特別支援教育研究」という雑誌に寄稿しました。
主に、知的障害特別支援学校の方々が読む雑誌なのですが、今回の特集で「障害の重い子どもの理解と指導・支援」というテーマがあり、そこでATやICTの実践を書ける方を紹介して欲しいという依頼がありました。
そこで、高松養護の佐野将大さんに原稿を依頼し、私はそれの解説を書かせてもらいました。
タイトルは「障害の重い子どもの理解やコミュニケーションを支えるAT・ICT活用について」というものです。
東洋館出版から出されていますので、市販で購入できると思います。
かいつまんで実践を紹介すると、選んだのに泣いてパニックになってしまう重度重複障害児の事例に対して、解決のための視点の整理を行い、iPadの「動画カード」を用意して選べるようにした物です。
機器事態はそれほど目新しい物ではありませんが、子どもの理解と「選択」についての深い考察があってこそだと思います。私の解説の、最後の部分のみ転載します。
本実践の良さはただ単に障害の重い子どもへ、ICT機器を使ったという実践ではなく、コミュニケーションにおける課題を分析し実態に合わせて丁寧に選択ができるようにした点にある。そして、その上で家庭生活への汎化ができるように分かりやすい形にしている。特別支援教育におけるICT活用の実践というと「使ってみた」で終わるものが多い。しかし、本来は児童生徒の実態を把握し、彼らの困難さを支援するためのツールとしてICTを使うのは、ICT以前の深い子どもへの理解が基礎になるべきであろう。ぜひ、この実践を参考に、障害の重い子どもへ有効なICT活用を実践してほしい。